オンラインゲーム「ウルティマオンライン」での私「Soo」の生活を綴る愛と勇気の一大叙事詩(嘘)
文化と礼節のシャード「ホコツ」でなんか生きてます。


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カカオ創生伝2章代3話[2009年01月27日(Tue)]
暗い部屋…
小さい窓からの月明かりがわずかに部屋を照らすだけの暗い部屋に2つの人影が佇んでいた。
妙な取り合わせであった。
片方の人影は屋根に頭が届くのではないかと言うくらいの巨漢であった。
異常に発達した、まるでオーガかというほどの体躯の巨漢に加えて頭に妙な形状の兜を被っていることがさらに男の異様を際立たせていた。
それに対してもう一人の人影、おそらく男性としては中肉中背、身長もほどほど、いや、どちらかと言うと小柄と言っても差し支えないほどであった。
もっともこれほどの巨漢を目にすれば世のたいていの人間は小柄に見えることだろうが…
その男性の顔は背中にちょうど月明かりを背負う位置にいたせいでうかがう事は出来ないが、どうやら手に持った書物を朗読しているようだ。
その手の知識があるものならば、男の口から発せられる言語がただのそれではなく、人間の持つ魔力(マナ)を増幅させる役割を持つ呪文の詠唱であると判っただろう。
そして彼の足元にはなにやら彼の腰ほどの高さのやや大きめな樽が鎮座していた。
なにが入っているのかこの位置からでは判らないが彼はどうやらその樽の中に向かって呪文の詠唱をしているように見えた。
そして樽を挟んだちょうど反対側に先ほどの妙な鉄仮面の大男が無言で佇んでいた。
奇妙な取り合わせだ。
やがて、小柄な男の声が段々と大きくなってきた。
呪文の詠唱が佳境に入ったのであろう。
空いている腕を樽の口へと伸ばすと、そこには目を覆わんばかりの眩い輝き、魔力の光が男の手に集まっていた。
やがて、男の詠唱が進むにつれて魔力の輝きは増してゆき、もはや部屋を白く染めるまでになっていた。
樽を挟んだ対面、鉄仮面の大男はその様子を前に微動だにせず、佇んでいた。
魔力の光に気おされたのだろうか、その表情は窺い知れないが、若干緊張しているようにも見える。
やがて小柄な方の男がふいに、呪文の詠唱を止め、一呼吸入れると最後の呪文を口にした。

「An corp」


静寂が部屋を包む。
この詠唱に随分魔力を消費したのだろう、男の荒い息使いのみが部屋に響く。
だがやがて、その沈黙も破られたようだ。
男達の目の前にあった樽の中に変化が生じたからだ。

「………………」

ザラ…ザラ…と中にあった灰が蠢きだした。
不意に灰の中から…
『何か』が伸びて樽の縁を掴み…
立ち上がった…



その場にいた全員が入り口に視線を向けていた。
そしてその場にいた全員が入り口から視線を逸らすことができずにいた。
『私』もその一人だった。
それだけ入り口にいる男が異様で異質な存在に見えたからだ。
男は目深にフードを頭から被っており、その表情を伺う事が出来なかったが、そのフードは店内の天井に届きそうなほどの長身であった。
また、全身もローブで包れていたが、ローブの上からでも解るほどの隆起した筋肉の存在が伺える。

ズシッ…ズシッ…

その男は入り口からまっすぐこちらに向かって歩いてきた。
その様子を見た『私』を取り囲んでいた男達は明らかに狼狽していた。

「な、なんだてめぇ。何もんだこるぁ!」

チンピラの一人が懐からブッチャーナイフを抜き、すごんで見せた。
他の仲間達も同じく懐に呑んでいた獲物をとるか、テーブルに投げ出していた愛用の武器を取りに走っていた。

ズシッ…ズシッ…

男はそんな様子など目に入らないかのようになおも歩みを止めない。

ズシッ…ズシッ…

「てめっ、てめぇ!コレが見えねぇのか!あぁ!?」
なおも刃物をちらつかせるが、腰が引けているのが傍目にも解る。

ズシッ…ズシッ…

そんなチンピラのことなどはなから目に入らないかのように男はチンピラと『私』達の横を通り過ぎ、カウンターの椅子に腰掛けた。
あっけに取られていた。
店内の人間の全てが、カウンターの、男の目の前に立っている顔を腫らしたマスターですらあっけに取られていた。

「…水をくれ…」
男はフードをあげることもせず、そのままマスターに声をかけた。
低い、そして小さいがよく通る声だった。
だがその声からは何故か疲労の色が見て取れた。

「・・・すまんがマスター。水をもらえないだろうか。あいにく現金の持ち合わせがないのでコレで水を売って頂きたいのだが」
と、男はローブの中から一個の宝石、大粒のダイアモンドを取り出し、テーブルの上に置いた。

「!?お、お客さん。困りますよ。こんな代物うちで買い取ることなんて・・・」
あわててマスターが首を振った
生粋の商売人であるマスターのあの慌てぶりを見ると、相当な代物なのだろう。

「構わない。とりあえずジョッキ一杯の水と、表に樽を二つ置いてある。それに水を入れてくれれば釣りはいらない」
男は顔を上げることもなくつぶやいた。
えらく気前のいい話だ。
逆にそんな男の言葉にマスターのほうがさらに動揺したようだった。

「おいおい、おっさん。えらい気前がいいじゃねぇか。あぁん?その宝石なんかヤベーもんなんじゃねぇの?盗品か?それともニセモンかぁ?」
いつのまにか男の後ろに先ほどいきがって見せたチンピラがいた。
男とマスターが普通に会話しているところを見てどうやら落ち着きを取り戻したのか、いつもの調子でいちゃもんをつけ始めていた。

「なぁおっさん。俺らのたまり場でんなふざけたマネされっとマジ迷惑なんですけどぉ~?」
先ほど抜いたブッチャーナイフの刃でピタピタと男の頬のあたり、フードをニヤニヤしながら叩き始めた。
だが男はそんな事などまるで気にしていない様子だった。
その態度にチンピラはさっと頭に血を上らせて顔色を朱に染めた。

「てめぇ…」
一瞬でその場の空気が変わった。
他の馬鹿共もジリジリと男の周りに集まりだしていた。
中にはブロードソードを鞘から抜き放ち、肩に担いでいるものまでいる。
だが仲間達が回りに集まってきたことに気が付いたチンピラは何を思ったのか自分のテーブルから酒瓶を持って男の元へやってきた。

「なぁおっさん。そんな立派なガタイしてジョッキに水とかじゃ物たりねぇっしょ?おっさんこの辺じゃ新顔みたいだし俺から一杯奢らせて・・・よっと!」

ガッシャン!!

チンピラは男の頭に手にしていた酒瓶を振り下ろした。
あたりに酒瓶の破片とその中身が散乱する。
今まさにテーブルに水入りのジョッキを置こうとしていたマスターは小さく悲鳴を上げて身を小さくした。

「ちょっと!!!!あんた何してんのよッ!」
私は周りの野次馬を掻き分けてチンピラに詰め寄った。
この馬鹿共がこうやっていつも旅人にろくでもない事をするからこの町はッ・・・!

「あぁ~?うっせぇな~てめぇもいつまでもチョーシこいてっとおんなじめにあわすぞ?ゴラッ!」
「デッヒャッヒャッヒャッヒャwwwww兄貴まじすげぇwwwwwまじパネェwwwww」
「なぁ?こいつ死んだ?死んじゃった?ッヒャッヒャッヒャッヒャwwwww」

嗚呼…なんで…
私は猛烈な怒りに身を震わせていた。
こいつらの低劣極まる人間性と。
そんな屑共にいい様にされている私と私の町の全てに…
なんでこんな馬鹿共に私の人生を狂わされなきゃいけないんだろう?
私の周りの全てが理不尽に感じられた。

ふと、後ろに何かの気配を感じた。

「!?」

あの男がいつの間にか私のすぐ後ろに、先ほどのチンピラを見下ろすように立っていた。
見れば男はフードを下ろしており、男の顔が上半分、鼻の頭あたりまで露わになっていた。
声からも感じたことだが男のコンディションは余り宜しくないようだ。
肌が随分とカサついており、顔もやせこけ、所々影が浮き出ている。
だがそれをまるで覆い隠そうとでもするかの様に男の趣味だろうか、やたらと派手な色合いのサングラスをかけていた。
だが何よりも私の目を引付けてやまない物は男の髪の毛だった。
男のサングラスと同じ派手な色をした髪の毛はまるで地球の重力に喧嘩でも売っているかのように頭頂部からまっすぐに背を伸ばし、地平のかなたを見つめていた。

「あぁ?お!おっさん生きてた?大人しく死んでるか寝た振りしてりゃいいのにwww頭わりぃな…ッグ!?ムグgggg!!!!」
いきなり男はチンピラの顎をつかみ、口を塞ぐと、いともたやすく自分の目の高さまでチンピラを持ち上げた。

ミシッ・・・ミシッ…

男の手の平から、顎の骨の音が聞こえてくる。
凄まじい膂力だ。
恐らく顎の骨くらい簡単に粉砕できるであろう。
・・・?
場違いだが妙なことに気が付いた。
さきほど酒瓶を頭に叩きつけられたとき酒があたりに飛び散ったはずなのに男のローブはまったく濡れた気配がない。
テーブルや周りの床はビチャビチャになっているというのに…

「気を使ってもらって悪いな坊主。いい酒だ。お礼に俺様からの返杯だ。受け取ってくれや」
ザザザザ…ザラザラザラ…

なんの音だろう。男の手の平の中から聞こえてくるような…
男には何の動きもない。
だが次の瞬間

「!?ンンー!!!ンー!!!」
チンピラが急に呻き、そして足をバタバタと振り回し始めた。
両手は自分を持ち上げている男の手を外そうと掴みかかっているがびくともしない。
見る見るうちにチンピラの顔が真っ赤になっていく。

「!て、てめぇ!!兄貴になにしてやがるッ!話しやがれ!」
あっけに取られていた回りの屑が男に武器を突きつけながら凄んだ。
だが男はまるで気にもせず、なおも兄貴と呼ばれたチンピラの顎を離そうとはしなかった。

「こっこのクソがぁ!!」
ドスッ!
周りを取り囲んだ屑の一人が男の背中をダガーで刺し貫いた。
なんてことを!!
私はすぐにその馬鹿の頬を殴りつけた。
その拍子に転んだ屑と一緒に男の背中のダガーまでも抜けてしまった。

「ヤバッ!ちょっとあんた!背中見せて・・・いつまでもそんなヤツに構ってないでっ!」
私は呆れてしまった。
この男は背中を指されたというのに未だにチンピラの顎を掴み続けていたのだ。
迷っている暇はない。
背中を刺されて、しかもその凶器を抜いてしまったのだ。
場所が場所だけに運が悪いと大量出血で死に至る危険がある。
一刻の猶予もないと判断した私はダガーの刺さった穴から男のローブを大きく引き裂いた。
しかし布の裂け目の下から覗いた男の褐色の肌には傷などこれっぽっちもついていなかった。

「…あれ?」
あっけにとられている私の頭上から低い声が降り注いだ。

「おいおい。いきなり人様の服を破って裸を覗こうとはナカナカにアグレッシブじゃないの。姉ちゃん」
「…」

妙だ。
男の背中の傷のこともそうだが…
なんだろう、この違和感は。
だがそんな事をぼんやり考えていると、

「んの野朗~。マジなめたマネしてくれるじゃねぇか。ここまでやったんだ。カクゴはできてんだよなぁ!おっさん!」
周りのチンピラの一人が割れた酒瓶を拾ってすごんでいた。
あぁ…まだいたのね…全員消えてなくなればいいのに…

…割れた酒瓶?
ローブの男を見る。
チンピラの持つ酒瓶を見る。

「…ナンデヌレテナイノ?」

そうなのだ。
男のローブは先ほどのチンピラに酒瓶を叩きつけられていたにも関らず濡れた気配がなかった。
先ほど刺された背中といい、ローブといい、この男は何かがおかしい…
何かが変だ…
この男には妙な違和感を感じるのだ。
こんなにも目立つ風貌にも関らずどこか希薄な存在感…
まるで幽霊かなにかのように異質ななにかを感じるのだ…

「あ”ぁ”?おもしれぇよ。やってみろ。とっ捕まえて埋めてやる」

…前言撤回。
存在感ありまくりな幽霊のような男はまるで紙くずでも投げるかのように先ほどのチンピラを放り投げると思いっきりメンチきっていた…
真っ直ぐに壁に叩き付けられて地面に倒れ付す哀れなチンピラ。

「…ゲェッ!!ゲホッ!!ゲホッ!!…ゲェェェェッ!!」
地面に突っ伏したチンピラは必死に咳き込みながら床に吐いていた…

…塵のような…砂のような物をドサドサと吐いていた…

「…な…なんだこれ…てめぇ!兄貴に何しやがった!!」
「さてね。人様を背中から切りつけるようなロクデナシはしばらく陸で溺れてな」

男の言葉をきっかけに場の空気が凍りつき、剣呑な雰囲気が漂い始めた。
いくらコイツラがボンクラの集まりでも今回は全員武器を持っている。
中にはハッタリを利かせる為だろうか、お粗末だが甲冑を着込んでいる者までいるのだ。
この場の空気に当てられたせいだろうか。
私の背中を掴んでいる友人の手が若干震えていた。
それを感じて私も緊張する。

「…」

大男がこっちをチラッと見やるとチンピラどもに視線を戻し、ため息をついた。

「やれやれ、クエスト失敗…と。店長に笑われるぜ」

大男はチッと舌打ちをするとカウンターの向こうで震えているマスターの手から水の入ったジョッキをひったくると中身を頭から被った。
水で濡れた男の頭からたちどころに蒸気が立ち上る。
しゅうしゅうと音を立てて濡れたはずの男の体が見る見る乾いていく。
その様子にチンピラどもはただ立ち竦んでいるしかなかった。

「…おい。なんだよ…あれ…」
「…馬鹿!知るかよ!おい!おめぇら!さっさとこのバケモンやっちまうぞ!」

口では威勢のいいことを言っているが全員誰が最初に行くか牽制しあっているのがバレバレであった。
その様子に男も少し呆れているように見える。

「…」

男はゆっくりと腕を持ち上げ、手の平をチンピラたちに向けた。
誰も動けなかった。
ただただ、男の手の平を見詰めるしかなかったのだろう。
その事がただ、チンピラ達に同情せざるを得なかった。
次の瞬間、男の手の平から凄まじい勢いで塵の濁流が迸った。
その勢いは凄まじく、チンピラ共は悲鳴を上げる間もなくあっという間に濁流に飲まれてしまった。
私は一瞬その異様な光景に呆けてしまったのだが、背中を掴む友人の手に篭められた握力が恐怖で強くなったことが幸いし、すぐに意識を取り戻した。

(逃げ道…窓…遠い…それに塵が…一か八か!!)

私は賭けに出た。
友人の襟首を掴んで肩に担ぐとテーブルから一飛びで窓に突っ込んだのだ。

ゴツッ!
ガシャン!

何かいやな音がしたがそれどころではない。
窓から飛び出し、店の裏の路地に脱出した。
友人を地面にぶつけないよう、抱きかかえて地面を転がる。
怪我は…
彼女が意識を失っていたのに一瞬肝を冷やしたが大丈夫だ。
彼女のおデコにでかいタンコブが出来てて、なおかつ窓枠に若干の凹みがあったが恐らく彼女は恐怖の余り気絶したのだろう。
すぐに友人を地面にほっぽり投げて見せの中の様子を確認する。

ゴツッ!

背後で何か聞こえた気がしたがそれどころではない。
店の中は惨憺たる有様だった。
男の姿も確認できないほどの凄まじい奔流が店の中心あたりで渦を巻いていた。
マスターは店の隅っこでガタガタと青い顔をして震えている。
だが妙なことにその塵の濁流はまるで意思を持っているかのような動きを見せていた。
渦の中から逃れようとするチンピラの姿も時折あったのだがそれを見越したかのように渦の中からまるで触手でも伸ばすかのように塵の一部が伸び、再びチンピラを渦の中に引きづり込んだのだ。

やがてその濁流は入り口から外へと飛び出し、空高く舞い上がり、海の上空へと向かっていった。
店の中には先ほど20人程もいたチンピラの姿はどこにもなかった。
変わりにめちゃくちゃに散らかされたテーブルや椅子と、それと色とりどりの大小さまざまな宝石があちこちに落ちていた。
その光景を店の隅っこの店長はただただ呆然と眺めているのだった。

目の前で展開したこの光景が信じられず、私は目を回しそうになった。
これじゃ店はしばらく営業できない。
私も御飯の食い上げだ。
オマケに今日は友人の『まかない』の日だったのだ。
ふと、背後にいるはずの友人の方に向き直った。
彼女はなんと顔を地面に突っ伏して倒れていた。
ひどい。何で彼女がこんな目に…
仕事と楽しみの両方を台無しにされ、大事な友人までこんな目に会い、やり場のない怒りに襲われた私は天を仰いだ。

「ひゃっ!?」
私の周りを一陣の突風が通り過ぎた。
突然のことに、とっさに目を閉じてしまった。
その突風は私の背後を通り過ぎ、一瞬後に再び静けさを取り戻していた。
目を閉じていたが私のそれなりの長さの髪が吹き乱され、顔にめちゃくちゃに張り付いてるのが解る。

もう踏んだり蹴ったり…
私はブツブツと神様への恨み言を言いながら目を開けた。

見慣れないブーツの爪先が目の前にあった。
思考が停止し、私は機械的な動きで目線を上に持っていった。


そこには顔を半分隠したモヒカン刈りの大男が立っていた。


「いよぅ。姉ちゃん。見てたぜ。さっきは中々いい動きだったじゃねぇか」

この男は何を言ってるんだろう…

「それにとっさの判断力もなかなかのモンだ。さっきの人数を相手にしてたときの勝負度胸といい、姉ちゃん、それなりに場数を踏んでるみたいだな」

男は心底感心したかのように、そして楽しそうに話していた。

「しっかし、店のマスターにはちっとわりぃ事しちったかな。店の修理代あれで足りてたかな~」

そうだ…店…まかない…友人…昨日残してたおやつ…

色々な記憶が様々な感情を呼び起こし、それらをない混ぜにしていく…

そして、感情の混乱が収まったとき、私の心の中にはたった一つの感情の迸りのみがあった。

怒りだ。

「何!!人事みたいに!!言ってんのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

私は地面を蹴り、飛び上がると渾身のハイキックを男の頭部に放っていた。
狙いは違わず、男の側頭部を的確に捉え、

ドガッ!

っと小気味良い音を響かせて男をふっとばし、路地の壁に叩きつけていた。

「あべしっ!」
男は壁に頭をしこたまぶつけ、ズルズルとその場にくず折れた、かに見えたがすぐに立ち直った。

「ふぅ~すげぇすげぇ。なんて蹴りしやがる。頭がクラクラするぜ」
男は頭を振りながら片膝をついていた。
とんでもないタフさだ…
だがそんなこと関係ない。

「立ちなさいよ!そして出て行け!二度と顔を見せるなっ!!どこぞでのたれ死ぬがいい!!今度はそのふざけた頭のてっぺんに踵落とすわよっ!」

怒りで頭がカッカカッカと熱くなっているのが解る。
耳の奥ではドクンドクンと血の流れる音さえやかましかった。
私は憤りを抑えきれず、ダンダンと地団駄を踏んでいた。
完全な八つ当たりなのだが一回爆発してしまった怒りをどうにも堪え切れそうにない。

「おいおい、姉ちゃん。もうその位にしとけよ。」

男はゆっくりと立ち上がった…

さっきの拍子で男のフードは完全に下に降りていた…

そして男の顔が顕になる…

それと同時に私の頭の中でザァッとした音が響いた。

わたしの頭に上 ったちが音をた てて引いていく。

おとこのかおの  したはんぶん  みえて なか ところ  な に    あ   れ …

あ      れ     くら い     よる?     まだ  ひ  る  …

ドシャァッ…

な に  ?  なん  音 ?  あ れ    ねむ  い




男は憮然として、その場に立ち尽くしていた。
目の前には、先ほどそれはそれは見事な飛び蹴りを自分にお見舞いしてくれた女性が横たわっていた。
半そでにボクサーパンツ、それにシューズといった服装から活動的な女という印象だったが、認識を改める必要がありそうだ。

「活動的ってレベルじゃねーぞ!っつかそれどころじゃねぇよな…」
目の前の『活動的過ぎる』女はいきなり何かに取り憑かれでもしたのだろうか、怒りに身を任せて襲い掛かってきたのだ。
完璧に不意を打たれて無様を晒す羽目に陥ったのだが、その状況をどこか楽しんでいたのも事実だ。
女の身体つきを見ればそれなりに鍛えてはいるのだろうが、この程度でどうにかなるほど自分の体はやわではない。
それに実際店をめちゃくちゃにしてしまったのは自分なのだ。
弁償はしたとはいえ、それではおさまらない物もあるだろう。
なら彼女の気が済むまでストレス発散に付き合うのもいい、と思って彼女に向き直ったら事態は急変した。
目の前でいきなり気絶したのだ。

「なんでぃなんでぃ。俺様のハンサム顔を見て気絶するとは。男を見る目はあるみたいじゃねぇか」

男はとんちんかんな事をほざきながら自分の顎をさする。
ふと、男は違和感に気付き、そして目の前の状況の原因を知ったのだった。

「…やべぇ…やっちまったなー。どうすんべ。この場でほっぽって行く訳にもいかねーわなー」

男はしばらく思案すると

「しょうがねぇな。自分のドジの始末は自分でつけねぇとな。」
男は目の前の女と、そのすぐそばで地面に顔をこすり付けて寝ているピンク色の髪をした女をそれぞれ持ち上げ、肩に担いだ。

「…俺達ってほんっとこういうトラブルに巻き込まれるよなぁ~。退屈しねぇで良いこった。ッカッカッカ」
男は大口を開けて高笑いを上げた。


男のむき出しになった顔の下半分…
骨もむき出しになった…否
骨だけになった口を大きくカタカタと開けて高笑いをあげていた・・・
Posted at 12:07 | | この記事のURL
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カカオ創生伝2章2話 『澱』[2008年09月29日(Mon)]
・・・夜が明けた・・・
なんだか体中が痛い。
ひどい疲労感が体中を駆け巡っている。
どうやら心身ともに疲れきっていたのか、窓の外の日差しはすでに早朝のものではなくなっていた。
もう昼時か・・・
仕事柄こんな寝坊はありえないことなのだが、夕べの出来事が相当応えたのであろう。
またベッドの中に潜り込んで甘美な眠りの世界へ逃避したいと言う誘惑が彼女を襲った。
だが起きなければならない。
この麻薬的な誘惑に負けて眠りこけるなど許されるはずがないのだ。

「そうよね・・・起きなくちゃダメよね・・・麻薬なんかに負けちゃダメだよね・・・」

「なに起き抜けに麻薬がどうのと不穏なことを言ってるんですかぁ・・・」

!?

一瞬身を強張らせて彼女は声のした方向に視線を送る。
入り口のドアにやや呆れ顔の友人がドアにもたれかかるように立っていた。

「ちょwwwなんですかその反応。せっかく起しに来たって言うのに」
「あ~ごめんなさい。ちょっと怖い夢を見ちゃって・・・」

あはは・・・と笑って誤魔化そうとする。

「まったく・・・早いところそのだらしない格好ナントカして店まで来てくださいよ」

言われて彼女は自分の格好に気が付いたようだ。
一体どんな寝相だったものやら・・・
彼女が寝る前に身につけていたはずの寝巻きは最早その役目を完全に放棄しており、彼女の肌は露になっていた。
だがその寝巻きの下に女性独特のふくよかな肢体を期待したものがいたとしたらその期待は裏切られていたことであろう。
彼女の体は職業戦士もかくやと言うほど発達した筋肉によって鎧われていたのだ。
だからといって女性としての美を損なうこともない、大型の肉食獣を思わせるしなやかさを備えた鞭のような肉体であった。
そんな体を惜しげもなく友人に晒していても彼女は気にもせず、軽く伸びをしてベッドから起き上がった。
目のやり場に困ったのは友人の方だろう、彼女の顔のほうがやや朱に染まっていた。
なにやらブツブツと不満を漏らしながら部屋を出て行った。
この分では早いところ店に向かった方がよさそうだ・・・
これ以上彼女の機嫌を損ねることがあっては『まかない』に影響が出るかもしれない。

・・・それに・・・最近は物騒だから・・・
無用なトラブルが起こっていなければいいが、と考えをめぐらし、ため息をついた。
近頃の自分のいやな予感と言うものはよく当たるものだ。
そんな事を考えながら彼女は急いで出かける準備に取り掛かった。
仕事着に着替え、長年の愛用品であるグローブを身につける。
なめした革製のグローブだが拳の部分に厚みを持たせており、拳を保護してくれる。
頑丈なつくりだが革自体は驚くほど柔らかく、握る、等の指の動きを阻害することもない、なかなかの逸品である。
そしてこのグローブの使い込まれた跡から、彼女の鍛え抜かれた肉体にも負けるとも劣らず、数多くの実戦を経験したのであろうことが伺えた。
軽く両手の拳を握りしめ、具合を確かめてから彼女は自分の勤める仕事場へと向かった。
酒場だ。

彼女は町の目抜き通りに位置するある一軒の酒場のバウンサー(用心棒)であった。


戦争が起こった。
その戦争はやがて世界を巻き込む大戦争へと発展して行った。
その戦争の中で人心は荒み、モンスターはますますその活動を活発にし、そして私の住む世界は、モンスターと、皮肉にも私と同じ人間の手によって荒廃していった。
私の住む港町にもかつては王国の兵士達や騎士達がその目を光らせることによって治安が保たれていた。
いや、それ以前に町の人間全員が道徳を理解し、一定のモラルを守ることによってその治安は、決して悪人がいないというわけではなかったが、ある程度守られていた。
だが、戦争が進むにつれて、町から騎士や兵士達が姿を消し、港町であるにも拘らず、船の行き来がなくなっていった。
それに伴い、町の外でモンスターの目撃報告が増えていった。
もともとモンスターや野党の類を余り見かけない町だった。
それだけに町を守る兵士達がいないと言うこともあって、町人達の間には不安が募っていった。
やがて町の人間達の間に

「自分達は王国から見捨てられたんじゃないのか?」

という噂が広まっていった。
根も葉もない噂だったが、この噂は瞬く間に町全体に広まっていった。
街の外にはモンスターや殺人者がうろついている。
町を守ってくれるはずの王国の庇護はない。
船の行き来もなくなって外の世界の様子が何もわからない、伺うことも出来ないこの町は、さながら牢獄にいるかのような閉塞感を住人達の心に植えつけていった。
そんな状況のせいか、町の人間、特に若い男を中心に自棄になる連中が出始めた。
昼間から仕事もせず酒びたりになり、道端で意味不明なことを大声で喚きたてたり、町の人間相手に暴力沙汰を起こしたり町の女性に無礼な振る舞いをするものまで現れる始末。
だがそんな輩もせいぜい2~3人程度の者が散発的に厄介事を起こす程度のものだった。
それもそうだろう。
彼らは王国に見捨てられ、自分もいつ死ぬか解らないという現実から自棄になった連中だ。
基本的に彼らは共通して人間不信に陥っている。
少なくとも徒党を組んで野党のごとく振舞うことはなかったはずだった・・・
あの男が来るまでは・・・


果たして彼女のいやな予感が今回も当たっていたことを彼女はすぐに思い知らされることとなった。
自分の職場のドアを開け、中に入るとすぐに彼女の見たくなかったものが目の前にいたのだ。
いや、見たくもない者達が。

「ヒャヒャヒャヒャ!なぁ~いいだろぉ~。ちょっとだけつきあえよぉ~」

何がそんなに楽しいのか、ヘラヘラと軽薄な笑みを浮かべたその馬鹿は耳障りな笑い声を上げながら先ほど私を起こしに来てくれた友人にしきりに絡んでいた。
おそらく酔っ払っているのだろう。
こんな商売をしていれば酔っ払いをあしらう術も身に付く物だが、こいつ等は話が別だ。

「なぁ~?俺らに逆らうと後々めんどうだぜぇ~?ちょぉ~っと一杯付き合うだけでいいんだよぉ~アヒャヒャヒャヒャ」
「いい加減にしてください!仕事の邪魔です!」
「あぁ~?ナニその口の聞き方?俺ら客よ?ナメてんの?あぁ?」

なにやら険悪な雰囲気になってきた。
まったく・・・
彼女は両手の指を軽く開閉して両手のグローブの具合を確かめる。
職業柄身に付いたほとんど無意識の動作だ。

「その辺にしてもらいましょうか。他の客にも迷惑よ」

とたんに馬鹿者がコチラに向き直った。

「あぁ!?っせーんだよ!このタコ!てめぇなんざお呼びじゃねンだよ!」

恐らく凄味を見せているツモリなのだろうが彼らの睨みなどまるで迫力がない。
それもそのはずだ。
彼らは元はこの町の何の変哲もないただのひねくれただけの若者なのだ。
群れることしか脳のない、それも群れたところでたいしたことをする度胸もないような連中だった。
以前の彼らであったならば町の人間も彼らのこのような振る舞いを許そうなどとしなかったであろう。
だが、今現実に町の人間は彼らを恐れている。
実際に今この酒場には彼ら以外の普通の客もいたが、皆が皆、見てみぬ振りを決め込んで係わり合いにならないようにしている。
・・・情けない。

「ウヒヒヒヒィィ。なぁどうする?なぁなぁ。おい。だぁれもオメーに味方なんかいねぇぜ~?ヒャヒャヒャヒャ」
「今なら謝ればもしかしたら許してやるかもしんねぇぞ~?アヒャヒャヒャヒャ」
「ハァ?おめぇ許してやるつもりなの?マジかよwww優しすぎじゃね?」
「んなわけねーだろ!このタコ!なぁ。折角だからお前も一緒にあそばねぇ?アヒヒヒヒヒヒィ」
「ウッヒョォォォォォォォ!!!!メイドと格闘女とかマジwwwww夢ひろがりんぐwwwwwwッヒョォォオオオオオ!!!」

・・・いつの間にかこの馬鹿どもは私と友人の周りを取り囲んで好き勝手に喚いていた。
知性の欠片も感じられない台詞に顔つきだ。
チラッと店のマスターに視線を送る。
少々気弱だが真面目で仕事熱心なマスターは相手が誰であろうと御代はきっちりととる商売人だ。
恐らくこの馬鹿どもにもその様に対応したのであろう。
私が来る前に何があったのかはマスターの顔の痣が物語っていた。

頭が熱くなっていく・・・
拳を握る力が強くなっていく・・・
この馬鹿者どもを叩きのめしたい欲求がムクムクと鎌首をもたげていた。
だが、それを抑えていられたのは

「勝手なこと言ってんじゃないわよー!ばーか!ばーか!DQN-!」

などとしっかりと私の背後に隠れて相手に野次を飛ばしている友人の存在があったからだ。
この場で私が激情の命じるがままに暴れるのは構わない。
だがその場合私は彼女を守りきることが出来るのだろうか。
何かを守りながら戦った経験などないに等しいのに・・・

等と思案していた時だった。

「!?」

何かが・・・来る・・・
この気配はどこかで・・・

私の顔は自然に緊張に強張っていった。
そして体も自然と硬くなっていく。
そんな私の変化にいつの間にか周りの馬鹿共の野次も消えていた。
皆後ろを振り返って入り口の方に視線を送っていた。

・・・ッシ・・・ズシッ・・・ズシン・・・ズシン・・・

・・・足音?
それにしてもでかい。
足音は『壁の向こう』から聞こえているのだ。
一体どれほどの大きさなのか・・・
そしてその足音は壁伝いに入り口に向かっていた・・・

・・・ズシッ・・・ズシ・・・ズシッ・・・

・・・3歩・・・2歩・・・1歩・・・

・・・ズシッ・・・

足音は入り口の前で止まり…

…ギィィィィィィィィィ…

やがて入り口は木製独特の軋みを上げて開き、足音の主を部屋へと招きいれた…

知らず知らずのうちに私は胸の鼓動が早くなっていた。
私はこの足音を『アレ』と連想している。
あの夜の日に私が犯した軽い犯罪。
そしてあの悪夢の船で味わった恐怖。
未知なる物に襲われるという尋常ならざる恐怖。
『好奇心は猫をも殺す』という諺があるが、それにしてもあの日に味わった恐怖は誰かからの『罰』というには度が過ぎた。
だがその恐怖ももう終ったこと。
そう思っていた。

あの恐怖はまだ終ってなどいない…
私には解ってしまった。
入り口から入ってきた男は、あの夜、私を追い回したあの鉈男と同じ『モノ』だと・・・
Posted at 19:03 | | この記事のURL
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追憶の午後 第2幕[2008年08月 3日(Sun)]
『無様ね・・・』
私は目の前で泣きじゃくる少女を見下ろしながら一人ごちた。
目の前の少女、おそらくかつての私自身。
このころの私は確かに父を愛していた。
そして父も私を愛してくれているはずと勝手に思い込んでいた。
ありもしない絆を・・・父の愛を求めていた。渇望していた。

『無様・・・全く不愉快だわ・・・』
苛立ちを抑えられない。
あんな男を親と慕い、無条件で愛情を傾けるなど愚の骨頂だ。
あの男は魔術師として、そして町を治める名士の一人として、たしかに確固たる地位にあった。
だが、それに比例して異常なまでの高いプライドと、それをさらに満たさんと願う上昇志向が混在していた。
我が家を更なる高みに上らせるのに我が子を利用することまで考えるほどに・・・

父の愛はもっぱら、魔術師としての才能のほとばしりを感じさせる弟Sooに向けられていた。
魔術師としての素質を一つも見出せなかった私に向けられたのは、失望、怒り、憎しみであった。
いや・・・
『それだけじゃぁ・・・なかった・・・』

ふと気が付くと、どうやら少女は涙をぬぐいながらおぼつかない足取りで移動を始めたようだ。
頭の中におぼろげに浮かぶ記憶を頼りに私は、どうやらこの少女は弟のいる厩に向かっていると気が付いた。
おそらく父親の剣幕から逃れてピートの様子でも見に来たのだろう。
ピート・・・つい2,3ヶ月前に浮かれたばかりの子馬だ。
乗馬が苦手でそれまで厩になど頼まれても近づこうとしなかったSooだがこの子馬が生まれてからコロッと態度が変わったものだ。
Sooはこの子馬を大層可愛がっていた。
おそらく内向的な性格の弟にとってこの子馬こそが一番の友人なのだろう。
いつかピートが大きくなったら自分の乗馬にする、などと熱っぽく語っていたのを思い出す。
それまで弟に理不尽にも忌み嫌われていた厩の世話をする馬丁のお爺さんはこの言葉にそれは喜んだものだ。

予想通り、Sooは厩の端のピートのいる一角に屈み込んで子馬が藁を食む姿を眺めていた。
だがその横から覗く表情は暗い。
その雰囲気を察したのかお爺さんも馬の世話をしながら心配そうに様子を伺っている。
だが遠くから近づいてくる私の姿を察知するとまるでなんとかしてくださいとでも言うかのように困った視線を向けてきた。
そんな視線になど恐らく子供は気が付かないだろうが、少女は弟の元へ近づいていった。

弟は自分の体がいつの間にか日陰に包まれていることに気が付いたのか、こちらに振り向いた。

「あ・・・姉様・・・」

日の光に照らされた弟の顔がことさらその白い肌を強調していた。
だがその目の周りだけ朱に染まっていた。
泣いていたのだろうか・・・腫れぼったい目を気にしてかやや伏し目がちに口を開いた。

「ごめんなさい・・・姉様・・・僕のせいで・・・」

私はそう俯きながら言葉をつぐむ弟の頭を両腕で胸に抱え込んでいた。

「いいの・・・大丈夫だから・・・」

『大丈夫なんかじゃ・・・ないでしょ・・・』

自分からは少女の顔を見ることは出来なかったが、その小さな肩が小さく震えているのが判った。

・・・イラつく・・・
何故当時の自分はこうも無力だったのか・・・
不当な暴力に屈するなど自分の美意識から鑑みてもおよそ理解できるものではないはずなのに。
だが、目の前のまだ年端も行かぬ自分にそんな今の自分の価値観など求めるのが間違いであろうが・・・

結局兄弟はしばらくの時間をそうして過ごした後、連れ立って館へと歩いていくのだった。

日はもう陰り、空を朱色に染めていた。



『・・・』
Rilaは退屈をもてあましていた。
というのも、どうやら自分はあくまで観客という立場を一貫せねばならないらしく、目の前の少女という、この劇の役者の前から離れることは出来ないようなのだ。
そして、当の役者は先ほどからまんじりともせずベッドに腰掛けてなにやら考え事などしているようなのだ・・・
これでは
「僕は一分も動きを止めていると死んじゃうんだよ!」
が口癖の弟ではあるまいが、それに近い状況に陥りそうである。
・・・などとどうでもいいことを考えて、先ほど見た幼いころの弟と自分の記憶に新しい弟の違いを思い出していた。

『・・・どこでまちがったのかしら?』

・・・いや、一概に間違いと言うのもどうだろうかと思うが、それにしても目の前で見せられると目を覆いたくなる変わり様だった。
自分の知っている弟は魔術師としてはずいぶんとガッシリとした体格をしていた。
同居人の某モヒカン男のような筋肉達磨と比べると、それはまぁ細身ではあるが、それでも世間一般での魔術師のイメージにはそぐわないだろう。
それに性格だ。
弟は短気を絵に描いたような男で先ほども述べたとおり、とにかく落ち着きがなく、考える前にとりあえず行動という男なのだ。
そしてその行動に至っても・・・
『無理を通せば道理がひっこむ!』
等とたわけた事を真顔で述べて、強引に物事を進めたがる傾向にある。
恐らくは深く物事を考えるのが苦手でめんどうくさいのだろうが・・・
先ほど見た幼い少年とは見事に重ならない・・・
そもそも弟はいやなことはすぐに忘れるという素晴らしいスキルを持っていたはずだ。
決して涙など、ましてや人に迷惑をかけたなどと言う理由で流す男ではないはずだ。
そんな繊細さなど無縁だったはずだ。
自分の知っている弟と先ほどの弟は本当に同一人物なのだろうか・・・
もしかしたら先ほどの繊細な弟の育て方を見直せばまた違った可能性を見れたのだろうか・・・
もし、そうなら成長したSooはどうなっていたのか・・・

『・・・やめた。』
いけない。どうも暇すぎてどうでもいいことを考えてしまった。
考えてみればこれは自分の夢ではないか。
目が覚めてしまえばいつもどおりの現実が待っているのだ。
それに別に自分は妹が欲しかったわけではない。

『どうせだったらもっと愉快な夢が見たかったわ・・・』
やれやれ、とため息をつき、ようやく彼女は目の前の風景がいつの間にか変わっていることに気が付いた。
どうやら少女は自分の部屋を出て廊下を歩いているようだ。

『・・・?ここは・・・』
やがて少女はある部屋の扉の前で足を止めた。
当時の自分の住んでいた館などまるで覚えてはいないが、その扉だけは何故かすぐに思い出すことが出来た。
それだけ深く記憶に刻まれていたのだ。
忌まわしい記憶として・・・




『だめ・・・入っては・・・だめ・・・』
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追憶の午後 序章[2008年04月23日(Wed)]
いい天気・・・
満面の日差しを顔に浴びて思わず表情もほころぶ。
庭で本を読んでいたはずだがいつの間にか寝てしまったのだろうか。
彼女は目を閉じたまま、その金色の髪の中から伸びた、人よりも長く若干先の尖った耳をそばだて、音を探る。
彼女はエルフだった。
妖精族特有の整った顔立ちだが、もし彼女の双眸を見たものは若干きつめの印象を覚えるであろう切れ長の瞳。
太陽の光を浴び、輝く金色の髪は肩の辺りまで伸びている。
同年代の女性と比べると種族としての特徴であろう、やや華奢な印象を受ける体格ではあるが、木洩れ日を浴びているせいか、幻想的な美しさがあった。
彼女の名はRilaといった。
冒険者という普段の仕事のなかの午後の寸暇をティータイムと読書で満喫中なのだ。
彼女は椅子から起き上がると
「ん~~~~~~~」
と軽く伸びをし、体をほぐした。

と、その時
「姉様!姉様~!」

私のことだろうか。
見るとなにやら小さな子供が自分のほうめがけて走ってくるのが見えた。
一瞬身を硬くしたRilaだったが、やがて近づいてくる見覚えのある人影に警戒を解いた。

「どうしたの?Soo。そんなに慌てて、」
と、ここまで話して彼女は違和感を覚えた。
今、息を切らせて自分の前に立っているのは、紛れもなく少年であった。
自分の知っているSooは、自分の弟というには余りにも印象の違う男であった。
彼は一般的に知られる魔術師としての他にも命あらざるものを使役する魔法、ネクロマンシーを習得したネクロメイジであった。
だが、それを人に話したところで到底信じられないことだろう。
彼はSTRが125というとんでもない屈強な肉体を誇っているのだから。
髪の色こそ彼女と同じ金髪ではあるが、彼の髪は重力に反発しているのだろうか、上に好き勝手な方向にツンツンと伸びている。
そして肌の色はエルフの中でも特異な、黒。闇色の肌をしていたはずだ。

だが今目の前にいる少年は明らかに自分の思い描く弟の姿とかけ離れていた。
金色に輝く髪の毛は多少の癖はあるものの風を受けて柔らかく揺れている髪の毛は背中まで伸びている。
そして肌の色は闇の色どころか染み一つない男の子供としては分不相応なほどの、恐らく世の女性達も羨望の眼差しを向けるであろう乳白色であった。
器量良しと評判の母親の面影を色濃く残したその顔立ちは今の悪戯好きな悪餓鬼の印象ではなくむしろ
大人しめな印象を与えることだろう。
『利発で大人しそうな少年。』
世の大人は感想を求められたならそう応えるであろう少年、それがかつての弟Sooであった。
それが何故自分の目の前に・・・

だがそんなことはお構いなしに目の前の弟は自分にまくし立てる。

「姉様!こっちに来て!はやく!はやく!」
自分の手を掴んで強引に引っ張る。
その時にようやく彼女は我が身に起こったことを認識した。
視界の隅を掠めた館の窓。
そこに写っていたのは一人の少女だった。

自分が子供になっている。

そして自分の手を引く弟の手のひらの感触。
感触・・・希薄と言うよりも何も感じなかった。

そう、自分は夢を見ている。
それも自分が子供の頃の、確かにかつて自分の体験した記憶だった。

『ふん、そういうこと・・・ね・・・』
彼女の意識、少女の中から冷静に自分を見つめる大人のRilaは子供の頃の思い出を追体験する形となったわけだ。


そうこうしているうちにどうやら弟の目的地に着いたようだ。
広大な庭の片隅の木の根元。
「姉様・・・これ・・・」
Sooの指差す先・・・木の根元に鳥の雛が落ちていた。
まだ飛ぶことも出来ない内に巣から落ちたのであろう。
それを見つけたということか・・・。

「わかったわ。ちょっと貸して頂戴」
自分の口が勝手に言葉を紡ぐ。
それを冷静に見つめる大人の自分がその時起こった出来事を思い出した。
・・・不愉快な出来事だった。
『やめておいた方がいいけど・・・たぶん言っても無駄ね・・・』

雛を弟の手から受け取った私は靴を脱ぎ、着ていたスカートの裾を軽くまくると木を登り始めた。
昔から私はこの手の体を使ったことが得意だった。
逆に弟はこの手の荒事全般を苦手としていた。
性格も外見も、このときとうに亡くなっていた母親の血を弟は色濃く受け継いでいたのであろう。
当時はいろんな大人たちに
「姉弟の性別が逆だったら・・・」
等とたわいのない戯言を聞かされたものだ。
そんなことを思い出しているうちに私は木の中腹にあった鳥の巣に雛を戻すことに成功したようだ。

『このあと確か・・・』
「Rila!!何をしている!!早く降りてきなさい!!」

やっぱり・・・
木のふもとに一人の男性が近づいてくるのが見えた。
私の体が、性格には幼い私の体がビクッと震えたのが判った。
そしてゆっくりと木を降りる。


「Rila!!おまえは一体何をしていた!!」
目の前の男が少女を見下ろしながら言った。
「あの・・・父様・・・わたし・・・」
私の口が恐る恐る開かれる。
「違います!父様!僕が姉様に・・・」
私の言葉をさえぎるように弟が口を開いた。
が、父は
「Soo。お前は向こうに行っていなさい。私はお姉さんと大事なお話がある。厩にピートの様子を見に行くといい」
弟の言葉をさえぎり、やさしく言った。
言葉自体は優しげだがその言葉には有無を言わせぬ迫力があった。
このときの大人しい弟ではこれ以上何も言えず結局引き下がることしか出来なかった。
弟がトボトボと厩の方に消えたのを見送り、男がこちらに向き直った。
そして私の体をジロジロと上から下にねめつける。
特に木を上ったときに汚れた私の手のひらと、足を見て不愉快そうに眉をひそめ、

*パシンッ!*

私の頬を張った。
「Rila!お前はなんでそんなはしたない真似をしたのだ!魔術師の!名門の家の娘であるお前が!何故!」
父は怒っていた。
危険なことをすれば父親が子供を守るため、叱る事はあるだろう。
子供が娘であったのならばなおさらだ。
だが、この父親には子供を叱るときの優しさなど欠片もなかった。
この父親が怒っているのはあくまで・・・

『魔術師の名門の家の娘が木登りをした・・・ね・・・』
そのことに尽きた。
『くだらない男・・・』
Rilaは現状をため息混じりに見つめていた。
そう、この父親はいつもこうだった・・・。
「魔術師の名門」
この言葉に以上にこだわりを見せた。
たしかに私の家はこの町でも数多くの魔術師、導師を輩出した名門であり、父自身もこの町で有力な魔術師の一人だった。
だが、そのせいだろうか魔法を使える自分を特別視する傾向があり、魔法を使えない人間を一番下に見るという歪んだ価値観を持った人物だった。
そして、その価値感は家庭にも妥協されることなく発揮されたのだ。
私は先天的に魔法の才能がなかった。
そして弟には生まれつき魔法使いとしての非凡な才能があった。
幼いころから武術や馬術などが好きで見る見る上達していく私。
幼いころから運動が苦手で体も弱く、だが難解な魔法書や古代遺物から見つけられたという巻物等を解読、理解していく弟。

父親がその狭量な愛情をどちらか一方に傾けることは容易に想像がついた。

『この時はそう思っていたのよねぇ・・・』
ふ・・・と意識のみの私は自嘲の笑みを浮かべた。

「ごめんなさい・・・父様・・・ごめんなさい・・・」
幼い私はただただ、男の剣幕に怯えているしか出来なかった。
そんな私の様子を見て父は急に
「フンッ!もういい。こんな下らん事は二度とするな。もう行きなさい」
男は私の目も見ずに立ち去っていった。
頬を押さえて涙ぐむ私を残して・・・
Posted at 23:57 | | この記事のURL
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カカオ創生伝2章[2008年04月 7日(Mon)]
来るんじゃなかった・・・
彼女は最早何回目かもわからない後悔の言葉を心の中でつぶやいていた。
薄暗い密室。壁の窓の外は一切の光もない事から、外はもう夜なのだということがわかる。
そして足元から伝わってくる部屋全体が揺れる感覚。
そう、この部屋は船の中の一室なのだ。
彼女はある日、町の沖合いに忽然と表れたこの船に興味を持った。
その船からは誰も人が降りてこないのである。
それどころかその船は沖合いに停船したまま港に近づいても来ない。

難破船?
ソレにしては船の状態は遠目から見ても判るほどに良好だった。
痛んだ形跡など微塵も見受けられない。
ただその船からは人の気配が感じられないだけなのだ。
ゆえに彼女は興味を持った。
もしかしたら奇跡的に船が破損することを免れただけと言う可能性もあるのだ。
もしそうだとしたらその難破船の価値は格段に上がる。
彼女の目にはその船が財宝を満載した宝船に見えたのだ。


彼女の目的はまさにその一言だった。
金さえあればこんな町から出られる。
もう一切の未来などないこんな死んだ町から・・・
金を手に入れるために船の探索は自分が一番にしなくてはならない。
町の人間は幸いにもこの船のことを気味悪がって近づくことはおろか、噂話にもすることはなかった。
もし噂になっていたらヤツラの耳にも入ってとうに先を越されていただろう。

だが、今はその方がむしろ自分にとっては望むところだった。
今の彼女の心の中には、船を見つけたときの高揚感など皆無であった。
かわりに彼女の心の中にあったのは
『未知なる物に対する恐怖』
ただそれに尽きた。

ミシッ・・・ミシッ・・・
足音。
この船の木製の床を踏む、重い足音が『また』彼女の耳に届いた。
「また・・・アイツがくる・・・」
ミシッ・・・ミシッ・・・
彼女の言う『アイツ』のものと思しき足音は段々とうずたかく積もれた樽の裏に隠れた彼女の耳にも聞こえてきた。
どうやらここはこの船の貨物室のようであり、まさにこここそが彼女の最初の目的地であったはずなのだが、この時の彼女はそんなことなど微塵も頓着していなかった。
ミシッ・・・ギィィィィィ・・・ミシッ・・・ギィィィィ・・・
足音に続いて何か別の音が聞こえる。
なにか重たい、鉄製のものを引きずって歩いているかのような音。
間違いない。あいつだ。
心臓の鼓動が早くなるのを感じる。体の震えもそれに乗じて大きくなる。何よりも自分の呼吸が荒くなっていくのが気になった。
あいつに気が付かれるかもしれない。
それは何よりも避けたい状況だった。
相手の氏素性が判らない以上は。

もっとも・・・
相手が人間なのかどうかも疑わしいというのが・・・
彼女の正直な感想だった・・・


彼女はこの船に夜、準備もそこそこに忍び込んだ。
乗り込んで早々、彼女は自然と笑みがこぼれた。
にらんだとおりこの船はどうやら無人であり、そしてどうやら無人になって少なくとも一ヶ月以上は経過しているようだった。
後はこの船にいったいどれだけの財貨が残っているか・・・
いや、なんだったらこの船ごと何とか金に返られないだろうか。
船は一か月分の汚れなどはあったが見たところ大きな損傷もなく、素人目に見ても廃棄するにはもったいない位の状態を保っているように見えた。
そうなると問題は船一隻を丸々換金するツテも船を動かす技術や経験も自分にはないことなのだが・・・
等と船室を思案しながら物色していた時のことだった。
彼女の背後に何者かの足音が近づいていたのは・・・

ミシッ・・・ギィィィ・・・・ミシッ・・・ギィィィィ・・・

!?
ドアの向こうの通路っ・・・!
何か来る!無人じゃなかったの!?

まずいことになった。完全に当てが外れたというのもあるが、この船が誰かの所有物であったなら自分は侵入者であり犯罪者であるということだ。
いや、自分が犯罪者になるのも困るが、もし、この船の住人のほうが犯罪者であったら・・・
そうなると自分の命の危険すらありえる。
どの道ここで見つかることは自分にとっては得策ではない。
とりあえずこの部屋には大量の木箱が積んであったのでその山の一つの裏に隠れてやり過ごすことにした。

ミシッ・・・ギィィィ・・・ミシッ・・・ギィィィ・・・
足音が段々と近づいてくる・・・
ミシッ・・・ギィィィ・・・ミシッ・・・ギィィィ・・・
それにしても何なのだろう・・・何か重たい物を引きずるような音が足音の後に続いている。
ドアを少しだけ開けてその隙間から廊下の突き当たりの様子を伺う。
もうすぐそこの曲がり角を曲がってくる頃だ。
曲がり角から自分のいるドアまでかなりの距離がある。
ドアを閉めてやり過ごすか、それともドアから走って一目散に自分の乗ってきたボートまで逃げるか・・・。
思案していたときだ。足音の主が曲がり角からその姿を現した。

その姿を見たとき彼女は明らかに冷静ではなかった。
彼女はドアに力を篭め、思いっきりドアを閉めてしまったのだ。
当然そのドアが閉まる音にその男(?)も気が付いたのかこちらの方向に顔を向けた。
異様な風体だった。
その男は身長が190はあろうかという長身に見合ったがっしりとした体躯。
やや派手な色合いのシャツを身に纏い、そのシャツの下からは厚みのある筋肉が浮き上がっていた。
だが果たしてその相手が男かどうかはその巨大な体躯から推察するしかなかった。
なぜならその男は頭に奇妙な鉄製の兜を被っていたのである。
妙な兜だった。
円筒形のその兜は頭の頭頂部が妙に尖っており、また、顔の前面も尖った形をしていた。
まるで鳥の嘴を模したかのようなその兜は、顔の露出が極めて少なく、目の部分に小さく切れ込みが設けてあるのみであった。
そして何よりも彼女が戦慄した物は、その男の手にしていた物だった。

それは鉈のようなものだった。
だがそれは果たして彼女の知っている「鉈」なのであろうか。
その鉈はゆうに彼女の身長ほどはある巨大な代物であった。
大きく、分厚く、所々に錆と、なにやら汚れだろうか、赤黒いものがこびり付いている・・・
それをその男は引きずって歩いていたのだ。

このとき彼女はすでに、恐怖の虜であった・・・
ドアに鍵を掛け、さらに部屋にあったテーブルや椅子を必死に積み上げていった。

ミシッ!ミシッ!ミシッ!
足音が近づいてくる。それも先ほどまでとは比べ物にならない速さだった。

ガチャガチャガチャッ!ドンドンドンッ!
ドアノブを回す音が部屋に響く。続いてドアを叩く音が・・・
いよいよ彼女の呼吸も荒くなってきた。
あまりの心臓の鼓動の速さに気が遠くなりそうになる。
喉はカラカラだ。

ドンドンドンッ!ドンガンガンッ!ガンガンッ! ミシッ!
どれだけ強い力でドアを叩いているのか、ドアが上げた悲鳴を彼女は恐怖と絶望の中ではっきりと聞いた。

ミシッ!ビキビキッ!
何と言うことだ。男はどうやらこのドアを破壊することに躊躇いを持っていないようだ。
そうなればこんな木製のドアなど長くは持たない。

どうするっ!?どうするっ!?どうするっ!?
彼女は必死にこの現状を打破するにはどうすべきか考えようとしたが、こんな極限状態の中ではそれも徒労に終わった。

・・・と不意に外が静かになった。
?ドアを壊すことを諦めたのだろうか。
だが、それは余りにも楽観的過ぎるだろう。
外の様子を伺おうと彼女は恐る恐るドアに近づいていった・・・。
・・・何も聞こえない。
さっきまでの喧騒が嘘のように静かだ。余りの静寂に耳が痛くなりそうだ。
外の男はいったい何をしているのだろうか。
恐る恐るとドアに耳を近づけようとした、その矢先。

ギィィィィィィィィィィィィィィィィッ!!!!!
男の持っていた鉈が彼女の目と鼻の先、ほんの数センチを掠めてドアから生えていた。

「!!!!!?????」
彼女は事ここに至って声にならない悲鳴をついに上げ、よろよろとドアから後ずさり、その場に座り込んでしまった。
完全な恐慌状態に陥った彼女の前でドアから伸びた鉈はドアを引き裂かんとばかりに横に動く!
彼女が先ほどまで立っていた位置を鉈が通過していった。
ドアの前に積み上げたテーブルや椅子がバラバラと崩れ落ちるのを彼女は震えながら見る。
・・・と外の男はいったん鉈をドアから引き抜いた。
そして
ドガンッ!
今度は鉈をドアに振り下ろしてきた。
縦に大きく亀裂が入り、さらにその亀裂から男の腕が伸びてきた。
ドアノブを回そうとしているっ!
彼女はとっさにそばに落ちていた椅子の足の破片を手に持ち、ドアから伸びる虚空をまさぐる太い腕に思いっきり振り下ろしていた。

バキッ!
狙いは違わずその腕に木の棒が当たり、砕け散った。
その痛みにひるんだのか男は亀裂から腕を引き抜いていた。
亀裂の向こうに腕を押さえて悶える男の姿が見える!
今しかないっ!
彼女はすばやくドアを開け放ち、脱兎の如く逃げ出していた。
男はまだ苦痛にうめいている。すぐには追ってこようとはしないようだ。

だが彼女はやはり冷静ではなかった。
彼女が逃げ出した方向は自分が来た方向とは逆であり、そして自分がその船のさらに奥に進んでいるということに気が付いたのはしばらくたってのことだったのだ。
こうして彼女は逃げ込んだ貨物室から身動きが取れなくなってしまったのであった。


ミシッ・・・ギィィィィ・・・ミシッ・・・ギィィィィ・・・
段々と遠のいていく足音に安堵し、彼女はため息をついた。
「はぁ~、やっぱ神様は見てるのね・・・こんなところに来るんじゃなかった・・・」
彼女は俯きながら一人愚痴をこぼす。
「っていうかなんなのよぅ、この船・・・。難破船ってレベルじゃないわよぅ・・・幽霊船よ。幽霊船。」
実際現れたのは幽霊どころか怪物であったわけだが。
足音は完全に聞こえなくなっていた。
冷静さも取り戻し、逃げるなら今だろうかと思案していたがふと、自分が今どこにいるかを思い出した。
「・・・ちょっとだけなら・・・いいよね?」
彼女は手近にあった木の箱を開けてみた。
「・・・衣類に・・・食器?こっちは・・・本?かな?なんだか怪物が跋扈する船にしてはずいぶんと生活感があるような・・・」
・・・ふと部屋の真ん中に置いてある樽が目に入った。
何故かその樽だけその部屋の真ん中に置かれているのも奇妙な話だが、その樽は蓋が完全には閉じられておらず、半分開いている状態だった。
・・・気になる。
彼女は蓋を恐る恐る横にずらし、中を覗き込んだ。

其処にあった物は、しかし、彼女の求めていたものではなく、ただ灰か埃のようなものが樽の半分くらいに積めてあるだけであった。
「・・・?なんだろ。まぁ特に価値なんかないよね・・・」
彼女はすぐに興味をなくし、そばに積んである木箱を開ける作業に戻った。
そして、
「ッ!?」
彼女は自分の求めていたものをついに発見した。
その箱には大小さまざまな宝石や宝飾具の類が入れられていたのだ。
宝石類の良し悪しが判るほどの目利きは彼女には不可能だ。そんなに宝石に縁のある生活をしていたらそもそもこんな場所に来る必要すらないのだ。
だが、庶民ながらこの箱の中に詰っている物が自分の未来を切り開く事が出来るほどの代物であるということだけは判った。
まさに感無量。場所が場所なら踊り出したいような気分であった。

・・・と、その時。
「おい」
!!!!????
どこからともなく声が聞こえた。
彼女が悲鳴を上げなかったのはまさに行幸だった。
心臓が口から飛び出るかと言うほどの衝撃と恐怖だったのだ。
彼女は震えながらあたりの様子を伺う。

「おい、お前だ。女。」
声はすぐそばから聞こえていた。


あの・・・

樽・・・

樽の中からだった・・・


「蓋を閉めろ。風が入ってきたら中身が飛び散るだろうが」
男の声だ。たしかにあの樽の中から聞こえる。
恐怖に震えながらも、彼女は樽に近づいていき、樽の中を覗き込んだ。
やはりそこにあったものは先ほどと変わらない、灰だけであった。
・・・?
いや、灰の中になにやら入ってるようだ。まるで木の枝か棒のようなものが覗いて見えた。
・・・なんだろう。
声は聞こえない。
彼女は恐る恐る樽の中に手を伸ばしていた。
指先に何かが触れた。
乾いた感触が指先に感じられる。
彼女はそれをゆっくりと引っ張っていった。
ズル・・・
灰の山の中からゆっくりと引きずり出されていくそれは・・・

人の・・・

およそ信じたくないが・・・

人の腕・・・

腕の骨だった・・・


「ッキャァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
再び恐慌状態に陥った彼女は悲鳴を上げ、手に持っていたものを放り投げてしまった。
すると樽の中から
「おい、なにをする」
悲鳴に負けないくらい大きな声が響いた。
「人の腕を放り投げるとはなんだ。早く拾って来い」
樽の中からの声に完全に我をなくした彼女は悲鳴を上げ続けている。
そしてこの騒ぎを聞きつけたのだろう。

・・・ミシッ・・・ミシッ・・・ギィィィ・・・ミシッ・・・ギィィィィ・・・
あの足音が段々と近づいてきた。
先ほどの恐怖が再び蘇り、彼女はパニックを起こしていた。
「おい、うるさい。早く腕を持って来い。ファーストクラスの客に乗務員がワインをサービスするように恭しくだ」
ミシッ・・・ギィィィ・・・ミシッ!ギィィィ!
声が、足音が、彼女の恐怖を狩りたて、追い詰めていく。
そしてついに・・・
・・・ガチャ
ドアが開かれ、仮面の男が姿を現した。
とっさに彼女は手に持っていた箱を仮面の男に投げつけていた。
箱は男の頭に当たり、ガンッ!という大きな音が部屋に響いた。
そして箱の中身、宝石等が地面にバラバラと散らばっていたが、彼女はそんなことにお構いなしにドアと男の隙間から外に飛び出していた。

「ッハァ!ッハァ!ッハァ!」
彼女は走った。
後ろを振り向く余裕などなかった。
ただしゃにむに走っていた。
果たして彼女は覚えていたのか、幸運にもこの時は道を間違えることなく船の横に付けていたボートにたどり着くことが出来た。
彼女はボートに飛び移り、大急ぎで町を目指しボートを漕ぎ出していた。
そしてやっとの思いで船着場にたどり着いた。
ボートから飛び降りて港に着き、家に向かって走る彼女は、

「おっと」
其処にいた見知らぬ男とすれ違った。
だがそんなことに構っていられない。
彼女は家にたどり着くとベッドの中にもぐりこみ、頭から毛布に包まって震えながら目を閉じた。
まるで今日の出来事を悪い夢であったと思い込もうとするかのように。
こうして彼女の恐怖の夜は終わったのだった。

だが、それが始まりだと知る者はこの時はまだ誰もいなかった。
Posted at 22:27 | | この記事のURL
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すっげぇ久々[2007年09月17日(Mon)]


Soo

吸血武士盾フェンサー(予定)
我がSoo家での2人目になる白豚候補。

GHにてギルマスのエリカ相手に
「我が家には実戦で使える手駒が少ない」
と愚痴っていたときに(ちなみにこの時2アカ所持)、槍を使ったことがナイと言うことを思い出し、フェンサーを作ることになった。

ならば何故名前が『Soo』なのか?

それについては
水を被ったら女になった、だの
地方領主であるSoo様の身分を隠して領地を視察するための仮の姿だの
Soo君がある朝目が覚めたら分裂していただの
諸説あるが未だに謎のままである。(っつーか考えてねぇ)

キャラクターの名前と方向性に話が進んだ時にエリカの
「だったら名前をSooにしろ」
という一言が原因である。

その時は
「ちょwwwwねーよwwwww」
と否定して終わったのだが、エリカがこのときの話を忘れた頃を見計らってキャラ作製を実行したところに中の人の性格がうかがえる。

中の人にしては久々に遊び心のないガチキャラになりそうな悪寒。
将来的には神性能のランスを装備したい。(遊び心?)
Posted at 23:31 | キャラクター図鑑 | この記事のURL
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北斗が泣いている![2007年04月22日(Sun)]




こんばんは。
放置が板についてきた感がしますが、こっそりと更新( ´,_ゝ`)
まぁ、何もしていないとかじゃないんですよ。
最近は忙しい時期を脱したのか、自分の時間が増えてきて喜ばしいことなんですけどね。


北斗の平和を守る忙しさに忙殺されたせいだと言っておきましょう。

さて、なんですか。
最近はなにやら怪しげな人たちがブラックロックを収集しているとかで、盛り上がってるそうじゃありませんか。
以前我がNESTではブラックロックを意味もなくドッカンドッカンさせて遊んでいたという事がありましてね。
そのとき集めた岩がたしかどっかに20個ほど残っていたはずなんですけど・・・

どこにやったのか思い出せません( ´,_ゝ`)

まぁ、そんなわけで今手元にあるのは一番上の写真に乗っているだけなんですが・・・

なんだかこの黒岩を交換することによってなにか今後の北斗の未来に影響がでるんじゃね?とか物騒なことが言われていますよね。

しかしそれにも関わらず交換を申し出るプレイヤーが多い・・・
なんでもこの黒岩を集めている集団(?)は見返りとして高価なアイテムで民衆をたぶらかしているとか・・・

けしからんな・・・
北斗を愛する善良なプレイヤーをそのような物欲でたぶらかそうなどと・・・

苦情を言うために現地へ赴く必要がありそうだ・・・

そんなわけで必死こいて黒尽くめの男を探しているしだいでアリアス。
なんでもこのブラックメンは恥ずかしがりやなのか、後ろ暗いことでもあるのか(僕的推理によりただ今前者が有力説)ヘイブン島をあっちへウロウロこっちへウロウロしてるらしいんです。
現に一回目に接触したときはすぐ目の前で消えてしまいした。

てめ、この野郎!
逃げてるんじゃねぇぜ!
それと青ルニください!(本音がチラリずむ)

怪しい・・・
このような不審が服着て歩いているような輩がよからぬ事を企んでいるはずがない!(人種差別?)
しかし必死にガードを呼ぶ僕の声に我等が偽善のヘイブンガード様(たまに鎧を強奪してます)は一向に動こうともしません。

ざけんな!死んでろ!

無辜の民をだまくらかしてよからぬ企みに加担させられてしまっている民が哀れでなりません。(民LOVE★)
無能なガードに変わって僕が何とかしなければ・・・

そんなわけでくまなくヘイブン島を探し回ってようやく怪しげな野郎を発見!\ノ'∀ンヒャッフォー

ヘイ!この野郎!
怪しいかっこうしやがって!
誰に断ってここで商売してやがるんでぇ!(若干間違い)
正義の怒りに燃える僕の剣幕に押されているのか終始無言の黒ローブ。

ふふん。
所詮コソコソ隠れて何か企むなんざぁ、性根が腐ってる証拠よ!
さぁとっとと無知だが善良な民を騙そうなんて事はやめてさっさと帰んな!

ってな具合で黒岩を突っ返してやりました!\ノ'∀ンヒャッフォー

ん~?何か渡されたぞ?



・・・TAFだと・・・?

貴様~!!物で人の正義が買えるとでも思っているのかぁ!!
全然反省していないじゃねぇか!


しかもこの野郎はこの直後すぐに何処かへ逃げ去ってしまった・・・

ギギギ・・・
何と言うことだ・・・
正義が泣いている!
ここはどこの国だ!
な~め~や~がっ~てぇ~

こうなったらとことん追い詰めてやろうじゃねぇかぁ・・・


こうして僕とヤツとの壮絶な追いかけっこの末、この民の徳の精神を蝕む悪しき黒岩を全てヤツラに突っ返すことが出来ましたとさ。( ´,_ゝ`)


まったく・・・
物で人の得の精神を惑わすとは・・・
そんな詰まんないことで僕のこの熱く燃える正義のハートがどうかなるとでも思っているのか・・・
緑ルニくらいよこせよ・・・(最低)
Posted at 17:56 | | この記事のURL
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一人3D祭り[2007年04月 4日(Wed)]
えーこんばんは。
今月になってやっと忙しい時期を脱したのか、カカオ営業に出ることが出来ました。
うれC-!!
ここでいつもならカカオでのガブリエル様のレジェンド伝説が語られるところなのですが、

暫く!!
あいや暫く!!
今日だけは僕自身の趣味で暴走させていただきます!!



この画像のドコにガブリエル君がいるかわかりますかな?
この白い『Wolffang』のコスプレ(って言うと殺されそう・・・)をしているのがガブリエル様なのですが、ここで誰かが
「このガブさんを3Dで見たらどんな風になるのかな・・・」

なんて言っちゃったものだから一大事。

・・・はい、
・・・やってみたんです。
・・・いや、ほんと、


すみませんでしたぁ!!

こっから下にSSとか張っていきます。
いや、ほんと、見るのは自由ですけど、無理しないでください。

ご利用の際は使用上の注意をよく読み、用法、用量を守って正しく見てください

では一枚目



・・・いや・・・ほんと・・・普通に立ってる姿を見ただけで・・・

 お察しください


さぁ盛り上がってきたところで2枚目ぇ!!(やけくそ)



のけぞりポーズ!!
Yeah!! CooooooooooooooooooL!!
はちきれんばかりの太ももとうつろな視線がもう溜まりません!



・・・すでにこの時点でグレーゾーンに突入してしまいました。
なんてことでしょう。
ちょっとガブリエル様ローライズすぎです。
このブログもしかしたら今月で削除されるんじゃないか?って不安になってきました。




・・・はい。良い子のみんな~
髭面のオッサンのはっちゃけっぷりに殺意を覚えちゃった子はいるかな~?
僕はもうこみ上げる殺意を抑えることが出来ないよ~
テヘッ ミ★

もうすぐUOから3Dが消えるそうです。
これを機会に皆さん3Dを楽しんでみてはいかがでしょうか。
その際の責任は一切取りませんのであしからず。
あひょあ
Posted at 00:54 | | この記事のURL
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続:それでもルナの空は青かった・・・[2007年03月21日(Wed)]
前回までのあらすじ。

金色の鶏冠が無意味にウザい彼の名はガブリエル。
Fの鉱山を巡る彼の生活はいつしか彼の心から、他人を信用するという事を忘れさせていった。
しかし、家主の理不尽な命令を達成するため、彼は図らずも他人の力を借りることを余儀なくされる。


そんな彼が頼んだのは、心を殺したプロの戦争屋。傭兵であった。
心を持たぬ傭兵。
心を凍らした鍛冶屋。
幾多の戦場を共にすることで、彼らの中に変化が生まれていた・・・。



俺様の名はガブリエル。
どこから見ても生産だろ?
だから自己紹介は省く。
しかし、今日で何日目になったのか・・・。
もうずっと、マイケルさんとともにデスパイスに篭る日々だ。
この頃になってくると俺様もマイケルさんのことをいくらかは理解できるようになってきたと思う。

彼は徹底して戦闘のプロだ。
彼はこの世のいかなる誘惑をものともしない。
ただ、依頼主から支払われる報酬のために黙々と戦う。
心を殺した戦闘マシーン、それが彼であった。
そんな彼との付き合いも決して不愉快なものではなかった。
それだけ長い時間を彼と共有していたのだ。

それもあの家主のせいだ。
俺様はその辺に蔓延するトカゲの死臭など意にも介さず、酒を煽っていた。
今はデスパ入り口付近でキャンプを張っている。
もう何日もここに篭っているのだ。
今が朝なのか夜なのかも分からなくなってきていた。
そんな環境が俺様を少し、センチな気分にさせたのだろうか。


自分の夢、将来の展望、いずれは達成してみたい野望。
今まで誰にも聞かせることなどなかった自分の事なんか話していた。
凶悪なモンスターの巣の中で焚き火を囲み、手には酒の瓶を持ち、身の上話を他人に聞かせるなんて、ちょっと前の自分では信じられないことだった。
うかつと言ってもいい。
自分が生き残ること、そのためにもっとも効率が良く、いかに確実であるかを最優先して考え、行動していたかつての自分が今の自分を見たらせせら笑っていただろう。
そもそも心を持たぬ戦争屋、傭兵に聞かせるような話ではない。


「それには興味がありません」

当たり前の話だ。
自分が他人から聞かされたところで、恐らく同じ事を言っていたであろう。
くだらないことを話した。
俺様は自嘲し、酒を煽った。

別に良いじゃないか。
マイケルさんは俺様から金を受け取り、俺様に身の安全を提供する。
俺様はマイケルさんが命を張るに足る報酬を保障する。
双方が双方の望みを果たし、得をする。
もっとも効率の良い関係であり、立ち位置であった。
不満などあるものか。
そんなことを考えながら俺様は今日もトカゲ共から皮をはいでいた。

・・・と。
「助けてください!もっと傍に寄らないとこの鎖は見えません!」

・・・っち・・・エスコートNPCか・・・
このデスパイスにはたまに、モンスター共にどこかからか誘拐されてくる馬鹿なヤツがこうやって助けを求めている場所がたまにある。
こんな危険な場所で恐らく自分の身を守ることも出来ないであろう非戦闘員を連れて歩くことがどんなに危険を孕むか、考えるまでもない。
悪いが助けてやる気は毛頭なかった。

・・・なかったはずなんだ。
気が付いたら俺様はこの馬鹿者の傍に近寄っていた。
・・・?なんだ?俺様はいったい何をしようとしている?
こんなやつを助けようってのか?
むざむざモンスターなんかに誘拐されるなんて、こいつが自分お命を守る努力を怠った結果に過ぎない。
その咎を問われるのはこいつ自身の責任のはずじゃないか?
以前の俺様だったら迷うような問題ではないはずだ。
なのに俺様は・・・

この馬鹿者をどうやって安全な場所まで連れていくか悩んでいた。



「それには興味がありません」

そんな俺様の迷いを見透かしたのか、マイケルさんからの一言が背中越しに響いた。
くだらないことで悩むな。
そう言うのか・・・。
生きることに最も適した答えを導き出す。
いつもやっていたことなのに、何で今は・・・




その迷いが運命を分けた。


俺様を取り囲むようにトカゲどもが一斉に沸きやがった!
やべぇ!
敵の数が多すぎる!
俺様も魔法は少しは使えるが、こう敵に肉薄されている状況じゃ、集中力を必要とする魔法は打てない!
かといって逃げ場はない!

死ぬ?
俺様は死ぬのか?
今までブリタニアで最悪の敵であるPKからも逃げ切った俺様が・・・
こんな場所でこんなトカゲ共に?
そんなくだらない最後を迎えるのが俺様の運命だったってのか?
ガラにもなく他人に気を取られた結果がこのざまか?

呆然としていた俺様が正気に戻ったのは、すぐ傍で響く剣激の音が聞こえてからだった。



続く

Posted at 14:23 | | この記事のURL
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それでもルナの空は青かった・・・[2007年02月 8日(Thu)]

ルナは嫌いだ・・・
町を歩いてるとそこかしこに庸兵共がたむろしているのが目に付くからだ。
彼らが嫌いなわけではない。
ただ、昔の傷に触るだけだ・・・。

俺様の名前はガブリエル。
ネクロでメイジな『Soo』の家で裁縫やら大工やらにこき使われたり、ギルド『Sold』で慣れない客商売なんてしている苦労人だ。
ある日Sooのヤツが家で鍛冶仕事をしている俺様にあるものを渡してきた。
バルクブックだった。
珍しくなかなか気が利いた土産を持ってくると感心したものだ。
S皮小口が300枚も入っているのを見たときはその感心が殺意に変わったものだが・・・

流石に手に余る代物なのだがヤツは無常にもこのバルクを金に変える事を俺様に命じやがった。

Soo『せっかく腐りで手に入れたのに捨てるなんてもったいないジャマイカ』
というのがヤツの言い分らしい。
ざけんな。死んでろ。
そもそも俺様は本職は鍛冶屋だ。
軟派な裁縫なんかにうつつを抜かしている暇はないんだ。
そもそも鉱山で採掘をすれば戦わなくても材料が手に入る鍛冶と違って裁縫は皮を生き物から奪わなくてはいけないのだ。
自慢じゃないが俺様のこのゴッツい腕は鉄を叩くためについてるんだ。
断じてその辺の野暮ったい戦士のように敵を殴ったり、テイマーっつの?女々しく動物とイチャイチャしたりドラゴンやらなにやら人の一人や二人丸のみにしそうなデカイ犬と馴れ合ったり、メイジのように掌からボゥワーっと火を出したり・・・

*この後がブリエル君の「自分は戦闘では無能」といういいわけを一時間以上聞かされることになるので省略*


まぁそんなわけでS皮といえばデスパでトカゲってのが俺様の出した結論だ。
ん?いつの間にか乗り気じゃないかって?
んむ、ブツブツ文句を言いながらもバルクを整理してみたら、どうやらBルニ小口やらブレス小口やら、なかなかつかえそうなものがたくさん出てきたからな。
今の不景気なご時勢。鍛冶一本でやっていくのもいいが、せっかくの俺様のマルチな才能だ。
裁縫なんて隠しスキルがあってもバチは当たるまい。
もちろん仲間達や知り合いには俺様が裁縫なんてするってのは秘密だ。
俺様の渋いイメージが台無しになってしまうからな。


しかし先ほども述べたが俺様は戦闘に関してはからっきしだ。
魔法は少々心得もあるが、これだけでダンジョンに入るのは気が引ける。
そもそも雑念だらけの俺様は魔法なんて長続きしないのだ。
そんなことを考えながらルナの町を歩いていると・・・・



庸兵か・・・
普段はどのプレイヤー達にも無視されるような存在。
日給たったの8GPでどうやって生活しているのかと謎が謎を呼ぶ存在。

これだ(ФωФ)

こいつらを戦わせてトカゲどもを倒し、俺様が皮を剥いでいけばいいのだ。
我ながらなかなかの名案に惚れ惚れしながらさっそく庸兵どもをみつくろう。
使い捨てとはいえ自分の背中を預けるのだ。
軟弱者はいらん。

俺様の目に留まったのはルナの民家の中で堂々とくつろいでいた男
『マイケル』さんだった。
パブリックとはいえPCの家に不法侵入をしているのを見て、

「コイツとはうまくやっていけそうだ」

と思ったのだ。


俺様たちはさっそくデスパにやってきた。
デスパイス。
初心者御用達ともいえるお手軽なダンジョンだ。
昔は俺様もお世話になったものだ。
ん?
意外か?
俺様だって最初から生産なんてしていたわけではないのさ。
そんなわけで俺様にはここの地理も手にとるようにわかる。
仕事をするにはうってつけよ。
しかしマイケルさんはどうだろうか。
さっき知り合ったばかりだ。
俺様はその実力の程を知らない。
庸兵という戦場のプロであるのだからその実力は疑うべくもないだろう。
こうして彼が未だに傭兵を続けていることこそが彼の実力の証明なのだから。
ただ、彼はそのことを口にしない。
彼は無口だ。
黙々と仕事をするタイプなのだろう。
ますます気が合いそうだ。




んむ。
流石は戦闘のプロ。
並み居るトカゲどもを切っては捨て切っては捨ての大活躍。
たまに怪我を負っても俺様も回復の魔法くらいは使えるからな。




トカゲ共を相手取り獅子奮迅のまいけるさん。
俺様はまいけるさんがトカゲ共を撃ち漏らすことはないだろうと、いつしか彼を信頼していた。
そしてまいけるさんもまた、俺様の援護を信頼してくれている。
そうはっきりと感じ取れた。
今、このとき、俺達は最高のコンビネーションだったんだ。
人を信頼する・・・
いつの頃だろう・・・
そんな当たり前のことが・・・
当たり前ではなくなっていったのは・・・
俺様はいつだって一人だった。
一人で鉱山をめぐっては石を掘る。
仕事場で出会うのは鉱山PKばかり。
いつの間にか俺様の心は他人を寄せ付けなくなっていた。

だが・・・
今このときだけは・・・
違った・・・
人を信頼する事の喜び。
人に信頼されることの充実感。
俺様は確かにそれを感じていたんだ・・・

後編へ続く
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プロフィール


Soo

ネトゲどころかPCすら初心者な僕ですが今日も元気に生きてます。
真面目に生きてるつもりなのに仲間達にはネタキャラ呼ばわりな不遇の日々。
それでも強く生きてます
性格
基本的に善人だが極めて思慮が足りず、楽観的にして自己破滅的。
深く物事を考えるのが苦手。
座右の銘
「プラスマイナス0思考」
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