ルナは嫌いだ・・・
町を歩いてるとそこかしこに庸兵共がたむろしているのが目に付くからだ。
彼らが嫌いなわけではない。
ただ、昔の傷に触るだけだ・・・。
俺様の名前はガブリエル。
ネクロでメイジな『Soo』の家で裁縫やら大工やらにこき使われたり、ギルド『Sold』で慣れない客商売なんてしている苦労人だ。
ある日Sooのヤツが家で鍛冶仕事をしている俺様にあるものを渡してきた。
バルクブックだった。
珍しくなかなか気が利いた土産を持ってくると感心したものだ。
S皮小口が300枚も入っているのを見たときはその感心が殺意に変わったものだが・・・
流石に手に余る代物なのだがヤツは無常にもこのバルクを金に変える事を俺様に命じやがった。
Soo『せっかく腐りで手に入れたのに捨てるなんてもったいないジャマイカ』
というのがヤツの言い分らしい。
ざけんな。死んでろ。
そもそも俺様は本職は鍛冶屋だ。
軟派な裁縫なんかにうつつを抜かしている暇はないんだ。
そもそも鉱山で採掘をすれば戦わなくても材料が手に入る鍛冶と違って裁縫は皮を生き物から奪わなくてはいけないのだ。
自慢じゃないが俺様のこのゴッツい腕は鉄を叩くためについてるんだ。
断じてその辺の野暮ったい戦士のように敵を殴ったり、テイマーっつの?女々しく動物とイチャイチャしたりドラゴンやらなにやら人の一人や二人丸のみにしそうなデカイ犬と馴れ合ったり、メイジのように掌からボゥワーっと火を出したり・・・
*この後がブリエル君の「自分は戦闘では無能」といういいわけを一時間以上聞かされることになるので省略*
まぁそんなわけでS皮といえばデスパでトカゲってのが俺様の出した結論だ。
ん?いつの間にか乗り気じゃないかって?
んむ、ブツブツ文句を言いながらもバルクを整理してみたら、どうやらBルニ小口やらブレス小口やら、なかなかつかえそうなものがたくさん出てきたからな。
今の不景気なご時勢。鍛冶一本でやっていくのもいいが、せっかくの俺様のマルチな才能だ。
裁縫なんて隠しスキルがあってもバチは当たるまい。
もちろん仲間達や知り合いには俺様が裁縫なんてするってのは秘密だ。
俺様の渋いイメージが台無しになってしまうからな。
しかし先ほども述べたが俺様は戦闘に関してはからっきしだ。
魔法は少々心得もあるが、これだけでダンジョンに入るのは気が引ける。
そもそも雑念だらけの俺様は魔法なんて長続きしないのだ。
そんなことを考えながらルナの町を歩いていると・・・・
庸兵か・・・
普段はどのプレイヤー達にも無視されるような存在。
日給たったの8GPでどうやって生活しているのかと謎が謎を呼ぶ存在。
これだ(ФωФ)
こいつらを戦わせてトカゲどもを倒し、俺様が皮を剥いでいけばいいのだ。
我ながらなかなかの名案に惚れ惚れしながらさっそく庸兵どもをみつくろう。
使い捨てとはいえ自分の背中を預けるのだ。
軟弱者はいらん。
俺様の目に留まったのはルナの民家の中で堂々とくつろいでいた男
『マイケル』さんだった。
パブリックとはいえPCの家に不法侵入をしているのを見て、
「コイツとはうまくやっていけそうだ」
と思ったのだ。
俺様たちはさっそくデスパにやってきた。
デスパイス。
初心者御用達ともいえるお手軽なダンジョンだ。
昔は俺様もお世話になったものだ。
ん?
意外か?
俺様だって最初から生産なんてしていたわけではないのさ。
そんなわけで俺様にはここの地理も手にとるようにわかる。
仕事をするにはうってつけよ。
しかしマイケルさんはどうだろうか。
さっき知り合ったばかりだ。
俺様はその実力の程を知らない。
庸兵という戦場のプロであるのだからその実力は疑うべくもないだろう。
こうして彼が未だに傭兵を続けていることこそが彼の実力の証明なのだから。
ただ、彼はそのことを口にしない。
彼は無口だ。
黙々と仕事をするタイプなのだろう。
ますます気が合いそうだ。
んむ。
流石は戦闘のプロ。
並み居るトカゲどもを切っては捨て切っては捨ての大活躍。
たまに怪我を負っても俺様も回復の魔法くらいは使えるからな。
トカゲ共を相手取り獅子奮迅のまいけるさん。
俺様はまいけるさんがトカゲ共を撃ち漏らすことはないだろうと、いつしか彼を信頼していた。
そしてまいけるさんもまた、俺様の援護を信頼してくれている。
そうはっきりと感じ取れた。
今、このとき、俺達は最高のコンビネーションだったんだ。
人を信頼する・・・
いつの頃だろう・・・
そんな当たり前のことが・・・
当たり前ではなくなっていったのは・・・
俺様はいつだって一人だった。
一人で鉱山をめぐっては石を掘る。
仕事場で出会うのは鉱山PKばかり。
いつの間にか俺様の心は他人を寄せ付けなくなっていた。
だが・・・
今このときだけは・・・
違った・・・
人を信頼する事の喜び。
人に信頼されることの充実感。
俺様は確かにそれを感じていたんだ・・・
後編へ続く