【乱筆乱文】 アトラスが『キャサリン』というゲーム企画をどう立てたのかの推測。そして、『レイトン教授』との類似性。 [2011年02月 1日(Tue)]
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『真・女神転生』『ペルソナ』『デビルサマナー』『世界樹の迷宮』『超執刀カドゥケウス』などで有名なゲームパブリッシャー、アトラス(※1)のPS3/360参入第一弾が『キャサリン』だ。
キャサリン - CATHERINE - 公式サイト http://cathy.atlus.co.jp/ このゲーム、『ペルソナ』チームが開発を手がけているだけあって、非常に魅力的なキャラクターデザインが目を引く。 当初公開されたティザーサイトでは内容がまったく見えず、、公開されたトレーラーもキャラクター、ストーリーの紹介にとどまり、ゲームシステムの全貌はまったく見えてこなかった。 かろうじて「ジャンル:アクションアドベンチャー」となっていたのだが、一抹の不安を覚えると同時に、ゲームシステムへの興味がかき立てられることなった。 そして、発売直前になってもロクに明かされず、謎を呼んでいたゲームシステムの『キャサリン』であったが、蓋を開けてみると驚くべきことに、 「アクションパズル+アドベンチャー」であった。 ゲームのストーリーを具体的に説明すると…… 主人公ヴィンセント(32歳)は5年来の恋人Katharine(キャサリン)に結婚を仄めかされていた。 だが、現状維持を望むヴィンセントはそんな恋人に対し口を濁すのみであった。 そんなある日、小悪魔な美女Catharine(キャサリン)が、ヴィンセントの前に現れ、ヴィンセントを誘惑する。 キャサリンに会ってからヴィンセントは毎夜、悪夢にうなされることとなる。 それと時を同じくして、ヴィンセントの住む街では睡眠中の男が謎の変死を遂げる事件が連続していた―― 昼間の日常パートでは主人公の三十路男ヴィンセントと彼女からの結婚圧力、そして小悪魔女とのアバンチュール(笑)な、ラブコメアドベンチャーパート。 夜間は、主人公を襲う悪夢である『IQ』チックなパズルアクションのパート。 簡単に言うと壮大なストーリーと設定で装飾された、パズルゲーム……なのだ。 これはちょっと珍しい組み合わせだ。 RPGやアクションゲームに壮大な世界観や設定、重厚なストーリーを組み合わせることは珍しくない。 だが、『IQ』や『ロードランナー』のようなアクションパズルは、『テトリス』よろしく、シンプルなグラフィックがよしとされる傾向が強い。 せいぜい『ぷよぷよ』『パネルでポン』のように、可愛らしいキャラクターで装飾する程度で、ストーリー要素は刺身のツマ程度の扱いだった。 だが『キャサリン』は、その「シンプルであるべき」と皆が考えるパズルアクションにRPGやアドベンチャー並みに凝ったストーリーとキャラクター、世界観を付けたのだ。 ……あれ? この構図、どこかで見たことがあるぞ? わかった、『レイトン教授』シリーズだ。 『レイトン教授』シリーズは『ドラクエ8』などで名を挙げた開発会社レベル5のパブリッシャー初挑戦タイトルであった。 多湖輝のベストセラー『頭の体操』(マッチ棒クイズとかの本)をベースに、 『ベルヴィルランデブー』的なキャラクターデザイン、 大泉洋と堀北真希を主演にキャスティングし、 『攻殻機動隊SAC』のグロス請けなどで定評のあった「P.A.ワークス」制作のアニメムービー、 という布陣で挑み、結果大ヒットとなった。 今では見事にレベルファイブ(※2)の看板ソフトであり、ニンテンドー3DSのロンチに『レイトン』新作の発売が予定されている。 『キャサリン』の場合。 ゲーム部分は『IQ』的なアクションパズル、 『ペルソナ』で人気のキャラクターデザイナー、 主人公はエヴァで山寺宏一、恋人はエヴァで葛城ミサト役だった三石琴乃をキャスティング、 そしてアニメムービー制作は『マインド・ゲーム』『鉄コン筋クリート』『GENIUS PARTY』、宇多田ヒカルのPVなどで有名な、スタジオ4℃(注※3)。 『レイトン教授』は『脳トレ』フォロワーである。 任天堂のDS『脳トレ』は「シンプル・イズ・ベスト」を地で行くようなソフトであった。 そして雨後の筍のように発売された、『脳トレ』フォロワーたちもシンプルなグラフィックなものばかりであった。 だが、『ドラクエ8』『ダーククラウド』『ローグギャラクシー』開発のRPGメーカーであるレベル5はそこに目を付け、 ハイクオリティアニメムービー、有名芸能人声優起用、などデラックスな装飾をほどこすことで、他の脳トレフォロワーとの差別化を図ったのだといえるだろう。 アトラスは、『レイトン教授』をモデルケースとして『キャサリン』を開発したことはおそらく間違いない。 中小メーカーであるレベル5のやり方を、アトラスなりに踏襲したのが『キャサリン』ではなかろうか。 また、『キャサリン』は声優陣が非常に豪華だ。 山寺宏一(『エヴァ』) 三石琴乃(『』) 子安武人(『エヴァ』青葉シゲル役) 沢城みゆき 谷山紀章 などそうそうたる名前が並んでいる。 『ペルソナ』は『真・女神転生』シリーズのスピンオフとしてスタートし、 第一作である『女神異聞録ペルソナ』は1996年発売のPS1ソフトであった。 そして『新世紀エヴァンゲリオン』TVシリーズの放映は1995~96年であり、ほぼ『ペルソナ』と同時期である。 『真・女神転生』を中高生にもウケるように、ポップにした学園生活ものである『ペルソナ』と『エヴァ』は客層も被っている。 当時、リアルタイムでシンジ君と同じ14歳であった『エヴァ』世代は、今、ミサトや加持と同年齢となった。 当然であるが、『ペルソナ』シリーズを1からプレイしているユーザーも今やアラサーである。 『ペルソナ』は「学園生活シミュレーション」でもあるのだが、「三十路のオッサンに学園生活も糞もねえだろ」という身も蓋もない事実。 『キャサリン』のストーリーの内容は「恋人からの結婚圧力に悩むアラサー男が小悪魔女に誘惑される」というもので、アラサーをターゲットにしたものであることは間違いない。 アラサーキャラで結婚もあり得た恋人であった加持リョウジと葛城ミサトのカップルをそのままキャスティングし、『エヴァ』を想起させれば、感情移入も促されるというものだ。 そして、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』の大ヒットはリアルタイム世代のファンを再び呼び戻した上、新規客も獲得したのが大きい。 それにあやかるわけではないだろうが、大ヒットした『ヱヴァ』(旧『エヴァ』)声優をキャスティングする効果はあるだろう。 確か、Xbox360/PS3のユーザーは、アラサー(の男性)が多いというデータもあったはずなので、ペルソナやメガテンの固定客が多いであろう、その層を手堅く狙うのはマーケティングの結果からも当然だろう。 開発費のかさむHD機の参入第一弾に『ペルソナ』や『真・女神転生』本編でを投入するのではなく、オリジナルタイトルで様子見をするのは理にかなっている。 (『ペルソナ』『真・女神転生』『世界樹の迷宮』も3DSで発売することが決定しているのでアトラスの本命は3DSであろう) そして、本編はアクションパズルなので開発リソースはRPGほど割かれない上、アドベンチャーパート班はアクションパズルパート班と分離し平行して開発が進められる、というメリットもある。 『キャサリン』のゲームシステムに再び目を向けてみる。 昼は恋愛アドベンチャー。 夜は悪夢の中のパズルアクション。 ……あれ? この構造、どっかで見たことがあるぞ……? そう、同じチームが制作する『ペルソナ3』だ。 『ペルソナ3ポータブル(P3P)』のゲームシステムは、 昼間は『同級生』『トゥルーラブストーリー』(『アマガミ』『キミキス』)ライクな学園生活シミュレーションで、友人たちの好感度を上げ 夜間はダンジョン潜りRPG、 という『キャサリン』と同じ、二重構造のゲームシステムであった。 『キャサリン』は『ペルソナ』のRPG戦闘パートを、アクションパズルに置き換えたもの、と考えることが出来る。 つまり、『ペルソナ』で実績にある二重構造を採用することで、開発リスクを減らしていると考えられるのだ。 『レイトン教授』を初めとするレベル5のゲームは、凄く斬新だ、という評価をされたことはほぼ無い。 レベルファイブは中小企業の小回りの良さを活かしつつ、ジブリや大泉洋や堀北真希を起用できる企画力や、コロコロとのタイアップにこぎ着ける営業力によって成長してきた。 要するにレベルファイブは「パッケージング」や販売力で成り上がったメーカーであると言える。 親会社であるインデックスHDに吸収合併され、会社としては消滅してしまったアトラス(ブランドとしては残っているが)であるが、レベルファイブの成功例を踏襲しようとする戦略は、なるほどと頷けるものがあるように思う。 HD機でリスクヘッジな開発をし、あわよくばヒットを狙う。 それと同時に、比較的低リスクなニンテンドー3DSに『真・女神転生』『ペルソナ』『世界樹の迷宮』を発表したアトラス。 据置機より携帯機に活路を見いだす中小メーカーの姿がそこにある。 『キャサリン』はそんな中で開発された、『レイトン教授』と『ペルソナ』の成功例を踏襲した「デラックスなストーリーのあるアクションパズル」なのだ。 『キャサリン』体験版をプレイしてみたが、パズルアクションとしても良く出来ているし、演出も凝ってて面白かった。ストーリーも小気味よく、先の展開が気になる感じだ。 ただ、「……なんで俺は『壮大なストーリーで倉庫番』やってんだろ?」というどこか狐につままれたような感覚もつきまとうのだが……。 似たような感触は『レイトン教授』の時にも味わったのだが。 ※注1 なぜアトラスが今までHD機に及び腰だったかというと、売上と開発費のバランスが悪く、投資した額に見合う収益が上げられるかが不透明だからだ。 アトラスはどちらかというとマニアックなRPGメーカーというイメージが強い(業務用のプリクラは別として) しかしRPGは開発時間が長くリスクが高い。 アトラスはDSやWiiで『超執刀カドゥケウス』という手術アクションゲーム(隠れた名作)が北米で中ヒット、『ペルソナ』が海外でヒットしたりしていたものの、 アトラスはインデックスHDに吸収合併され会社が消滅してしまった。 しかも、アミューズメント(ゲーセン)事業からは撤退。 ただ、PS3/360で開発費が非常に膨らむかというと決してそういうわけではなく、日本一ソフトウェア(『ディスガイア』シリーズが有名)やガスト(『アトリエ』シリーズが有名)やケイブ(『怒首領蜂』などが有名)などのシューティングメーカーがHD機でソフトを販売できていることから見ても、開発費を比較的安く上げる方法はあるはずなのだが。 PS3/360のソフト売上はPS2と比べ確実に落ちているのでPS2と同じ開発費であったとしてもペイしない危険性が高まっているのだ。 ※注2 レベル5は、この『レイトン教授』を皮切りに 『コロコロ』とのタイアップでゲームシステムは『ファミコン版キャプテン翼』で、『イナズマイレブン』。 あのジブリがアニメを制作する『ニノ国』などタイアップによってスマッシュヒットを続けている。 ※注3 スタジオ4℃はハイクオリティアニメで定評がある。 「ハイクオリティアニメ」ブランドを築いているアニメ制作会社といえば、ジブリ・4℃・プロダクションIG・マッドハウス・かつてのゴンゾなどが挙げられるのだが、その一角に数えられる存在だ。 |



