先週の土曜は、ノルマンディの上陸記念日の65周年で、オバマを招待したサルコジがはしゃいでいた。オバマが来てほしがったエリザベス女王が結局来ないで、息子のチャールズになったので、全体としては、ダークスーツの男ばかり、という構図になり、ふと、ここにヒラリーがいたらどうだったろうなあ、と思った。
ヒラリーは、黒人差別主義者からも嫌われていたので、黒人差別よりも女性差別の方が根が深いことがよく分かったが、この場面で、つまり戦争の記念の場面で、合衆国大統領が女性というのは、なんだか想像がつかない。
サルコジの代わりにセゴレーヌがいたら、というのは、想像がつく。サッチャーでも違和感なし。
アメリカの女性大統領って、違和感があるのはどういう刷り込みなんだろう。
イギリスには女王というシンボルが現役でいる。フランスのシンボルもけっこう女性がいる。古くはノートルダム、革命後はマリアンヌ、ジャンヌ・ダルクも、フランスのナショナリズムと戦争に結びつく。マリアンヌも勇ましい。ノートルダムだって、ドラゴンと戦ったり、魂を悪魔の手から奪い返したり、勇ましい図柄もある。
アメリカの建国の理念とかのシンボルの女性像ってなんだろう。フランスからのプレゼントだった「自由の女神」のほかに何かある?
ピルグリムファーザーズとか、「建国の父」とか、けっこうマッチョかなあ。勇ましいところではカラミティ・ジェーンなんて思いつくが、あれは、愛国心や理念とはちょっと違うだろう。アニーよ銃を取れってのもあったが、やはり違うし。綺羅星のようなハリウッド女優たちももちろん違う。アメリカの女の子が自分を投影して憧れるキャラクターってなんなのだろう。まさかワンダーウーマンとかじゃないだろうな・・・誰か教えてください。
それにしても、『ライアンを探せ』の映画以来、若いアメリカ人がこの日にけっこう来て、当時のGIの服を着ていろいろコスプレするようになっている。
それを解説した人が、「それは、アメリカはあれ以来、ヴェトナムとか、イラクとか、いろいろ戦争をしましたが、この第二次大戦が最後の100%正義の戦争だったからです」とTVで言っていた。
そういう単純な解説を聞くと、「ふーん、100%正義の戦争で原爆を落としたんですかい、毎年ヒロシマにも行けば?」なんて思ってしまう。
Pascal Bruckner の 『La Tyrannie de la penitence』という本を読んだら、へえ、小林よしのx そっくりの論議がフランスにもあるんだなあと思う。
自虐史観をやめて、アメリカの軍事力に頼るのもやめて、自力防衛しろ、というのだが。(大きな違いは、フランスは「いい加減アメリカに吠え付くのはやめて」ということで、日本は「いい加減アメリカに尻尾を振るのはやめて」ということである)
ヨーロッパは、一度過去の悪(帝国主義とか奴隷売買とか)を認めたら、その「悪という病」から生還して免疫を得た者として、悪と恥というワクチンを、他の国に接種して回れ、という発想はおもしろいけど。
南アメリカが、悪をスケープゴートとして切り捨てる代わりに、絶対に罪に問わないという条件でアパルトヘイトの加害者の証言を集めまくっていることは知っていたが、そうやって再構成した「真実」は本当に真実なのか、とも思う。
逆に、ドイツが、もし、罪に問わないという条件で旧ナチスの証言を集めて再統合の道を開いていたら、歴史はどうなっていただろう、とか、フランスがコラボを切り捨てたやり方とか、いろいろ考えてしまう。
Pascal Bruckner はまあ、最終的には、アメリカの若さと理想主義と、ヨーロッパの老獪さと智恵を組み合わせて西洋の理念を守ろうという風に落ち着いてしまうんで、日本とは比較はできないのだが。小林某と似ているのは、古い文化のヨーロッパや日本ではアメリカのように意気軒昂でなく、覇気がなさ過ぎる。過去の反省ばかりしてないで、過去の栄光に積極的に目を向けて自信を持って、アメリカと対等にやれ、という論調なのだが。
一人の人間でも若い時と年取ってきた時では、生きる姿勢は違ってくる。長く生きてると、理想と現実の差を思い知らされていたり、うしろめたいところがいっぱいあったり、もう腕力に頼る自信も気持ちもなくなったり・・・
それはそれでしょうがない。そこで、血気にはやる若者に説教してまわるのか、彼らと組んでもう一度体も鍛えて、生涯現役やるのか・・・あるいは、高齢者にやさしい環境作りに励むのか・・・
聖ベルナルドゥスの四つの心の状態では、
やましいところがなくて平安な心=天国
やましいところはないが不安な心=煉獄
やましくて不安な心=地獄
やましいところがあるが平安な心=絶望
というそうで、今のヨーロッパは、過去の過ちを恥じていながら、もう自分の老後や消費生活のことにだけ汲々としているとBrucknerは言いたいらしい。しかし、それは実は絶望の状態であり、世の悪から目を逸らしているだけである、だからもう一度武器をとって戦え、的な、タカ派発言である。
アメリカとヨーロッパは多文化主義と普遍主義で違っているが、民主主義の本場だし、キリスト教同士だもんね、と安易に言われると、オバマが、アラブ圏で、宗教とは人を結ぶもの、と、イスラムに友好的なことを言ったのも、それは、アブラハムの宗教同士だもんね、本来は仲良くなれるはず、という風にも聞える。
そういうところを強調されると、イスラムはキリスト教徒を「神を信じる者」としては尊重していて、本当の敵は多神教徒や無神論者である、とかいう基本に戻りかねないんで、日本人なんかは警戒した方がいいと思うんだけど。
「やましくて不安」だけど、まだ死んでないし、絶望もしたくないのであれこれ考えよう。